妖の王子さま



「え・・・?」




多々良の言葉に、蒼子は目を見開いた。
白玖の母親。
今まで、会った事などなくいたことすら知らなかったのだ。
いてもおかしくはないのだが、そんなことを白玖が話したことはなく、以前家族の話を軽くした時にも、白玖にははぐらかされていたことを思いだした。





「な、なんで・・・」

「母上様は、蒼子さんの事をあまりよく思っていないのです。蒼子さんの存在は隠していたのですが、この前の天狗との抗争で気づかれてしまいまして」

「・・・だから、私を」

「母上様は、辛辣なお方です。不必要だと思うものにはとことんと厳しいお方で・・・」




多々良は言い辛そうにしながら言葉をつづけた。




「操り人形・・・って、その母親の操り人形ってことか?」

「え・・・?」




ポツリと呟くように牛鬼が言った。
その言葉に蒼子は牛鬼を仰ぎ見る。




「そういう事、か?」

「・・・・そういう言い方は好みませんが、間違ってはいません。白玖さまは、母上の野望のもとに生まれたお方なのです」





絶望にも似た多々良の言葉に、蒼子は言葉を失った。




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