妖の王子さま
「白玖さまは、戦うだけの道具として育てられたのです」
涙が、頬を伝う。
そんな悲しいことはない。
戦うだけの道具としてしか求められず。
そして、白玖は感情を失くしたのだ。
白玖の根源を知った。
「白玖が・・・、あんな風に自分を傷付けながら戦うのも・・・、感情に乏しいのも・・・、そのせい?」
「・・・そうです」
「そんな・・・」
ポロポロと溢れだした涙が布団を濡らしていく。
愛を知らなければ、人を愛することなんてできない。
そんな感情があることを知らなければ、持つことすら危うい。
そして、そんな感情は不要だと切り捨てられ、戦うだけの道具として。
「母上様は、蒼子さんに会ってから白玖さまが感情のようなものを芽生えさせていることに、苛立ちを覚えているんです。ですから、蒼子さんを・・・」
「だからって、蒼子さまを殺そうとするなんて許せねぇ!」
牛鬼が声を荒げた。
蒼子はいたむ胸を抑えながら、いつまでも涙を流し続けていた。