妖の王子さま
「誘拐では、ありませんよ。そのような、下等な人間の考えと同じにしないでいただきたい」
「え・・・?」
誘拐ではない。
十分に、誘拐のようなものではないかと蒼子は思う。
自分は限に連れ去られ、牢に閉じ込められているのだから。
「あなたには、大事なお役目を担っていただきます」
「役目・・・?」
「はい」
さも当たり前のように告げられる。
まるで、騒いでいる自分が無様でおかしいというように。
「あなたのその、不思議な力を我々のために使っていただきます」
「・・・え」
自分の、あの不気味ともいえる力をこの男に知られたことを思いだした。
それを何かに利用しようとしているのだと、ようやくここで気づく。
逃げなければ。
本能がそう言っている。
逃げなければ、どんな目に遭うか目に見えている。