妖の王子さま
「それより、どうしたの、この傷は・・・。白玖たちになにか」
気になっていたことを尋ねると、牛鬼はひどく瞳を揺らした。
それに、なにかがあったのだと気付いた蒼子は顔色を変える。
「なにが・・・」
「特別なことがあったわけじゃないんだ・・・。相変わらず、天狗や・・・朱鬼さまとの戦いが起きていて」
「特別なことじゃないって・・・でも」
「違うのは・・・、狐の・・・白玖の方だ」
言い辛そうに牛鬼が告げる。
蒼子は不安に瞳を揺らしながら牛鬼の言葉の続きを待った。
「蒼子さまがいなくなってから、前以上に白玖は感情を消し、戦いに没頭してた。今の白玖は、傷の痛みも感じないような、なにも感じない化け物みたいなもんだ・・・」
「え・・・」
「攻撃を防ぐことも交わすこともしないで、突っ込み、恐れることなく敵に向かって行く。以前なら、多少防いでいた攻撃さえも。だから、白玖の身体は今まで以上にボロボロなんだ」
牛鬼から知らされた残酷な現実に蒼子は言葉を失った。
どうしてそんなことになってしまっているのか。
「だから、俺たちも白玖が少しでも傷を負わないようにって庇っているうちに・・・」
「だからそのケガ・・・」
蒼子は労わるようにそっと牛鬼の身体を撫でた。