妖の王子さま
「牛鬼、私がいなくなっても白玖のところにいてくれたんだね」
「・・・蒼子さまがいつか戻ってくるかもって思ったら出て行けなくて。それに、なんだかんだと、俺の事追い出さずに受け入れてくれてたあいつらの役に立てたらなとか思って」
「そっか・・・。ありがとう」
牛鬼の思いに蒼子は嬉しくなり微笑んだ。
そして、蒼子は胸に抱いた想いを牛鬼に告げた。
「私を、妖の世界に連れて行ってほしい」
「蒼子さま・・・。俺、・・・ボロボロになって、無我夢中で蒼子さまの匂いをたどって思わず来てしまったけど・・・。蒼子さまに助けてもらおうって思ったわけじゃなくて」
「うん」
「蒼子さまは人間の世にいたほうが絶対にいいってわかってる。だから、連れ戻そうとか思ってたわけじゃなくて」
牛鬼は焦るように言葉を走らせる。
自分がここに来たことで、蒼子の心配をあおり、妖の世界に引き戻してしまう事になるかもしれないことに心を痛めている。
無我夢中で走りたどり着いたのは蒼子の元だった。
そんな自分の行動に、牛鬼は戸惑っていた。
「私が、白玖のところに戻りたいの。白玖の事を、助けたい」
「蒼子さま・・・」
「私にそんな力なんてないかもしれないけど・・・。知らないふりしていたくないの」
離れた場所で、心配しているよりも側で傷つく方がずっといいと蒼子は続けた。
牛鬼はその言葉を聞いて少し考えると小さく頷いた。