妖の王子さま
白玖がいつも運ばれてくる部屋の前につくと、見張り番としてたっていたのは志多良だった。
「志多良!」
「え・・・、あ、蒼子!?」
蒼子の姿に驚き目を見開くが、次の瞬間目を潤ませ蒼子の身体に抱きついた。
志多良の身体を抱きとめ強く抱きしめる。
「よかった、志多良はけがはないのね」
「うん・・・。でも、でも、白玖さまが・・・」
泣きじゃくりながら蒼子の胸から顔をあげた志多良が苦しそうに叫んだ。
蒼子の心に不安がよぎる。
「白玖は、この中?」
「うん」
「入ってもいい・・・?」
「うん。今は多々良だけしかいない。多々良が手当てをしてるんだけど・・・」
志多良は襖で閉ざされたその部屋を横目で見つめる。
同じように見つめた蒼子は、そっとしたらの身体を離しその襖に手をかけた。