妖の王子さま
「蒼子・・・」
すがるような声に、蒼子は背中に回した手に力を込める。
「蒼子に会えて・・・なんだか・・・」
「嬉しいね」
「嬉しい?これが、嬉しいってこと?」
「そうだよ」
顔をあげた白玖が蒼子を見下ろすと蒼子はにっこりとほほ笑んだ。
蒼子の瞳を見つめた白玖が、同じように笑いかける。
蒼子は、初めて見る白玖のにっこりとした笑顔に一瞬目を見開くが嬉しくなってさらに笑みを深めた。
「嬉しいね」
「うん。私も、白玖に会えて、嬉しい」
それから白玖は、何度も嬉しいという言葉を連呼しながら少し無理して体を動かしてしまった蒼子と共に布団に横になる。
そして、蒼子に抱きつきながら幸せそうな寝顔で眠り始めた。
その様子を見守っていた多々良はこれでよかったのだと自分を納得させ、牛鬼たちを連れ外に出た。