妖の王子さま
空はどんよりと曇り空。
高校からの帰り道、蒼子は空を見上げながらつまらなそうにため息を吐いた。
雨は嫌いだ。
濡れると気持ちが悪いし、雨ではどこにも出かけられない。
大好きな学校の裏の丘にも雨が降ってしまえば行くことはできないのだから。
蓮井蒼子(はすいあおこ)、高校3年生の17歳の少女は、大人しく、引っ込み思案な少女だった。
目立たないように、問題を起こさないように、と隠れて生きてきたことが、今の彼女をつくっている。
「蒼子!」
「・・・ゆかり」
友だちのいない蒼子の唯一ともいえる友人の片山ゆかり。
蒼子とは正反対の、笑顔の絶えない明るい少女だ。
「雨、降りそうね」
「うん」
「急いで帰らなきゃ、降られるよ」
「ほんとだね」
二人で並び少し足早に歩き出した。