妖の王子さま
蒼子が次に目を覚ましたのはそれから2時間後のことだった。
自分にまきつけられていた白玖の腕をそっと外し、布団を出る。
すやすやと穏やかな寝顔で眠る白玖を見て蒼子はフッと微笑んだ。
もしかしたらずいぶん眠れていなかったのかもしれない。
そう思った蒼子は起こすことをせず白玖の身体に布団をかけ直すとそっと部屋を出た。
「蒼子さま・・・」
襖の向こうには牛鬼が正座をして廊下の方を見て座っていた。
「牛鬼・・・。ずっとそこにいてくれたの?」
「はい・・・。蒼子さま、頼ってしまってすみませんでした」
牛鬼は深々と頭を下げた。
戻ってきてくれたことは嬉しかったが、蒼子が傷ついてしまう事を知っていて頼ったことを少しだけ後悔していたのだ。
牛鬼は、蒼子に戻ってきてほしいだけで、力を求めていたわけではなかったが、蒼子にとってはそうとらえられてもおかしくないと感じていた。
そのことを、訂正するつもりは牛鬼にはなく、ただ静かに頭を下げた。
「知らせてくれてありがとう。私を、またここに戻してくれて、ありがとう」
「蒼子さま・・・」
それでも蒼子は、牛鬼を責めることをせずそう言って穏やかに笑う。
牛鬼は胸が苦しくなりギュッと眉を寄せると深く頭を下げ直した。