妖の王子さま
「私、白玖の事が気になって、せっかく自分の世界に戻ったのに・・・全然嬉しくなかった。怪我をしてるんじゃないか、眠れてないんじゃないかって・・・。だから、嬉しいの。側にいれば、例えケガを負ったとしても、私なら助けられるから」
「どうしてそんな・・・」
「最初は・・・、ただ怪我をしている人を放っておけなかっただけだと思う。でも、今は。白玖だから助けたい。白玖の力になりたいって思ってる」
自分のそんな心境の変化に、蒼子は自分でも驚いていた。
利用されているただそれだけの関係であったのに。
いつの間にか、そんな思いは消えていた。
白玖と出会い、白玖と関わるうちに放っておけなくなった。
なにも知らず、まるで子供のような真っ白な心を持った白玖。
その白玖を護りたいと願うようになった。
「蒼子さまは、白玖を・・・」
「ふふ・・・、そうかもしれないね」
はっきりとは言わなかった牛鬼の言葉を汲んで、蒼子はそう微笑んだ。
その時、蒼子が背にしていた襖が勢いよく開く。
「蒼子っ・・・!」
焦ったような表情を浮かべた白玖が立っていた。
蒼子と牛鬼は座り込んでいてその白玖を見上げる。
蒼子の姿を見つけた白玖は勢いよく蒼子に抱きついた。