妖の王子さま
「蒼子・・・!どこかに行ってしまったかと思った・・・。帰ってしまったのかと・・・」
「白玖・・・。バカね。帰ったりしないわよ。言ったでしょう?私は白玖の側にいたいの」
蒼子の優しい声が、触れる手が白玖を包み込む。
白玖は初めて感じるその温もりに安心したように目を伏せた。
「どこにも行かないよ。私は、白玖の側にいるよ」
胸の中に膨れ上がっていた不安はすっと消え去り、白玖の心の中は暖かい安心感に包まれていた。
白玖自身は、その想いが不安で、安心感であることに気づいてはいなかったのだが・・・。
それでも、自分に生まれたその感情が心地よく思っていた。
「蒼子、まだ体本調子じゃないでしょ?寝てないと」
「で、でも、もう動けるまでには回復しているし」
「だめ。勝手におれの傷引き受けたんだから。おれの命令には従って」
「う・・・」
蒼子の手を引き部屋の中に戻した白玖は問答無用で蒼子を再び布団に横たえる。
蒼子自身も、抵抗はせず白玖の思うままに布団に横になると布団の中から白玖の事を見上げた。
今まで見た中で一番穏やかな顔をしている白玖に安心したように微笑んでそっと瞳を閉じた。