妖の王子さま



蒼子が眠ったのを確認した白玖は、静かに立ち上がると襖をあけ外に出た。




「白玖・・・」

「いってくる」

「蒼子さまに、なにも言わずに行くのか?」

「・・・・。今度は絶対に言うな。言えばお前を斬り捨てる」

「・・・言わねぇよ。俺だって、蒼子さまを傷付けたくない」





白玖の鋭い瞳を受け牛鬼は眉を顰めそう言った。




「でも、もう、今までみたいな・・・」

「わかっている。無茶はしない。蒼子が泣くのを見たくないから」

「約束だからな。無事に戻ってこいよ」





白玖の背中にそう告げると、白玖はその言葉を受け止め歩き出した。
牛鬼はその背中を見送ると、決意を固め蒼子が眠る部屋の前で姿勢を正した。




「俺は、絶対に蒼子さまを部屋から出さない。それが俺のするべきことだ」





言い聞かせるように呟くと、固く目を閉じた。





蒼子は、そんなことも知らず眠りの世界に深く落ちて行っていた。





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