妖の王子さま
それから、蒼子が再び目を覚ましたのは1時間後の事。
部屋にさす光が真っ赤で夕方なのだと気付いた。
部屋を見渡すとそこには誰の姿もなく静けさが漂う。
眠る前までは白玖がいたはずだった。
どこに行ったのだろうと立ち上がり襖をあけた。
「あ、蒼子さま。目が覚めた?」
そこには、先ほどと同じように牛鬼が正座で座っていた。
蒼子は小さく頷くと視線を左右に動かした。
異様に静かなことが気になった。
いつもは人の姿は見えなくとも、なにかしら誰かの声は聞こえているからだ。
「ねぇ、白玖は?」
「所用で出てるよ。しばらくしたら戻ってくるんじゃないか?」
牛鬼は明るく務めそう言った。
蒼子はその言葉に少し黙り込んでそっか、と納得した。
しかし、しばらく待っても白玖は部屋には戻って来ず、静かだった屋敷内が慌ただしくにぎやかになってきた。
そのことに少し不安になった蒼子は再び外を覗き込む。
「牛鬼・・・。なんの騒ぎ?」
「え?あ・・・、俺もよく知らないんだ」
牛鬼はそう告げたが、一瞬瞳が彷徨ったことに気づいた蒼子は牛鬼に詰め寄った。