妖の王子さま



「なにか、あったの?白玖は?」

「なんでもないって。大丈夫だから、蒼子さまは部屋に戻って」

「なんでもないって、こんな慌ただしい感じ・・・。いつもきまって白玖は怪我をしてて」



蒼子の鋭い考察に牛鬼は言葉を噤んだ。
それでも、自分の仕事だと蒼子を無理やり部屋に押し込む。




「蒼子さまは、まだ完治したわけじゃないんだから大人しく部屋にいて」

「待って、なにがあったのか教えて!白玖は大丈夫なの!?」

「大丈夫だよ。なに言ってんの。騒がしいからって、何かあったからとは限らないだろ」




そう言ってぴしゃりと襖を閉じた。
蒼子は無理やり開けようと手を伸ばしたが、牛鬼はその向こうでがっちりと抑え込んでいるのが見えやめた。


不安がよぎる。
牛鬼が何かを隠していることはわかったが、だからといって自分にできることはない。
牛鬼を振り切り部屋を出たとしても、捕まるのは時間の問題だ。




「牛鬼・・・。お願い。白玖の事が心配なの」

「だめだ。蒼子さまを部屋から出すなって言われてる」

「どうして・・・」

「蒼子さまはもっと自分の身体を大切にしろよ!続けざまに力を使って、これ以上血を流すのは危険だろ!」




襖の向こうで牛鬼が叫ぶ。
でもその言葉は、白玖に何かがあったと思わせる言葉だった。




< 205 / 381 >

この作品をシェア

pagetop