妖の王子さま



「人間である蒼子さんを引き入れたのがばれた上一度追い出したはずの蒼子さんをまた戻してしまったことが、母上様の逆鱗に触れ、その罰を受けた。・・・なんて言えるわけがないでしょう?」

「わかってるよ!だったら早く、白玖の怪我治せよ!」




多々良にあたったところで、どうにもならないことも無茶なことを言ってしまっていることもわかっていた。
それでも、当たらずにいられなかった。




「わかってます!ですが・・・。悔しいですが、母上様の方が1枚上手なのです。白玖さまを死ぬ一歩手前まで痛めつけ・・・、治癒能力が回らぬくらい白玖さまのお身体は・・・」

「くそっ!・・・いいから早くどうにかしてくれよ!」




牛鬼は苛立ったように声を荒げ踵を返すと蒼子のいる部屋の方へ足を進めた。
そして、部屋のある方へ角を曲がったところでその足をぴたりと止めた。





「・・・な」





驚愕し立ち止まった牛鬼に部屋に戻ろうと襖に手をかけた多々良が怪訝な瞳を向ける。




「あ・・・蒼子さま・・・」




青ざめた顔で吐き出した名前に多々良は目を見開き慌てて飛び出した。
そしてその角の先を見て、愕然とする。

そこには、ガクガクと体を震わせ顔を青ざめた蒼子の姿があった。





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