妖の王子さま
確執
「蒼子さん!なぜ・・・」
部屋にいるはずの蒼子の姿に戸惑い声をかける多々良に、蒼子は瞳を揺らせたまま顔をあげた。
「・・・今の、どういう事・・・?」
「・・・っ、聞いて」
全てを悟った多々良は手をおでこにあて深く息を吐いた。
知られたくなかった。
白玖にも、前もって決して知らせるなと言われていた。
真実を知れば、蒼子が傷つき苦しむことをわかっていたからだ。
「白玖、私のせいで・・・」
「違うんです!蒼子さん!これは・・・っ」
なんと言い訳したらいいのだろう。
嘘をついたところで、蒼子は納得しないだろう。
聞いてしまっていたのなら、今更なんと言葉を並べたてようと無駄なのだと。
「白玖に会わせて・・・っ!」
「それは、できません」
「なんで!」
「白玖さまが、そのように望んでおられるので」
すがってくる蒼子を苦しげに見つめ、多々良はそう言った。