妖の王子さま
「お願い、白玖にはちゃんと後で私が叱られるから!」
「いけません!白玖さまは、蒼子さんに力を使ってほしくないんです!ただでさえ、この前の白玖さまの怪我と牛鬼の怪我まで引き受けたあなたに、これ以上負担をかけたくないんです。その気持ち、わかってあげてください」
「多々良・・・、でも・・・っ」
胸が、苦しい。
側に、いたいと願う。
「白玖が傷ついたのが私のせいなら、私もその傷を背負いたい!白玖だけが苦しむなんて嫌!だから・・・っ!」
「蒼子さま・・・」
「いけません。白玖さまの命令に、私はそむくことはできませんから」
多々良自身も、今の蒼子に力を使ってほしくはなかった。
今までさんざん利用してきた自分だったが、惜しみなく力を使おうとする蒼子の事を気にかけるようになっていた。
「それに、今のあなたでは。少しの傷も受け入れることはできないでしょう」
「え・・・?」
「食事をとられていないのでしょう?こんなに痩せてしまって・・・。これでは、どちらにせよ許可できません」
「そんな・・・」
そう言われ、頑なに拒んでいた自分を呪った。
多々良が自分の身体を心配してくれていることはわかっている。
それでも、蒼子は納得することはできなかった。