妖の王子さま



蒼子が中にはいると、白玖は真っ青な顔で横になっていた。
身体には包帯が巻き付けられていて痛々しい姿。




「ひどい・・・」

「白玖さまは、抵抗なさらなかったようです」

「どうして・・・」

「矛先が、蒼子さんに向かないように。それに、もともと白玖さまは母上様には逆らえないのです」




操り人形。
そう言っていたことを思い出した。

白玖にとって親というのは、それ程絶対的な権力があるんだろう。



「自分の子どもをこんなに痛めつけるなんて・・・」

「・・・そうですね」




そっと白玖の身体を撫でる。
力を使えないことがもどかしい。
それでも、白玖の思いや多々良の気持ちを想うと、使うわけにはいかなかった。

力がなければ、なんて役に立たないんだろうと思う。



こんなに傷ついた白玖を見ながら、なにもできない自分が苦しかった。



一瞬、頭の中に何かの映像が浮かんだ。
蒼子はその瞬間なにも考えられなくなる。




「蒼子さん!」




多々良が声をあげ蒼子を白玖の身体から引き離した。




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