妖の王子さま
「え・・・?」
蒼子はきょとんと呆然と多々良を見上げた。
焦ったような多々良の表情に首をかしげる。
「約束、しましたよね!」
声を荒げられ、自分の身体を見下ろすとその腕には傷ができていた。
「え・・・?なんで・・・?」
戸惑い声を漏らす蒼子に多々良は怪訝そうな顔をする。
まじまじと自分の腕にできた傷を見つめ、蒼子は混乱していた。
「無意識・・・ですか?」
「・・・私、どうして・・・」
力を使うつもりなんてなかった。
本当に無意識にしてしまっていたことに蒼子は混乱していた。
身体が震え、戸惑いに視線を揺らす。
そんな蒼子を多々良は思わず抱きしめていた。
「あっ」
「すみません・・・。声を荒げて・・・。大丈夫です。白玖さまの側にいてあげてください」
安心させるように多々良が言うと、蒼子はホッとしたのか体の震えが治まった。
それに気づいた多々良は体を離す。