妖の王子さま
「私自信、蒼子さんの措置には悩むところがあったんです」
「え?」
突然、話を切り替えた多々良に顔を上げる。
多々良は静かに微笑み言葉をつづけた。
「白玖さまが心を持つことがいいことかどうか、測りかねていたんです」
「・・・そう」
「白玖さまが惑うということは、白玖さまの命に直接かかわってきますから。私は、白玖さまの側で使える者として白玖さまを守る義務があります」
蒼子を側におくことで、白玖の身に危険が及んだら。
もし、戦いに迷いが生じ取り返しのつかないことになったなら。
そんな思いが消えなかった。
「ですが・・・。守るものがあると強くなれる、そういう事もありますし。白玖さまにとってどうなのか、ずっと考えてきました」
「どう・・・だったんですか」
気になった蒼子はおずおずと尋ねた。
「蒼子さんがいなくなった白玖さまの戦い方を見れば、迷いなんて消えましたよ」
「え・・・」
「蒼子さんは、白玖さまの側に必要な方です」
多々良ははっきりとそう答えた。
ホッとした蒼子は、照れくさそうにほほ笑んだ。