妖の王子さま
「・・・ん・・・」
低く唸る声が聞こえ、蒼子と多々良は白玖に視線を移した。
ゆっくりと、瞳を開く。
白玖の瞳に、蒼子と多々良の顔がうつった。
「蒼子・・・。なんで・・・」
「白玖、よかった。目が覚めたんだね」
それでも、苦しそうな絞り出すような声に蒼子は胸を痛めた。
助けたい、急かされるような思いに胸を焦がした。
「・・・で・・・て言った・・・のに・・・」
「すみません、白玖さま・・・。ですが、お力は使わせておりませんから」
白玖の言葉を汲み、多々良が深く頭を下げた。
「白玖、無理に喋らなくていいよ。白玖が嫌なら力使わないから。だからお願い、早く元気になって」
「・・・蒼子」
「うん。私、側にいてもいい?」
蒼子が尋ねると、白玖は小さく頷いた。
それを見て、蒼子は小さく微笑んだ。
白玖は、不思議でならなかった。
蒼子の自分に向ける視線、そして表情は今まで向けられたことのないものだった。