妖の王子さま
元気になってほしい。
そんな風に、心から思われていると感じられたことも初めてだった。
いつも、いくら多々良や志多良に心配されていても、それはどこか戦うためになのだと。
早く良くなって、早く戦いに向かえと。
そう言われている様だった。
真意がどうだったかなんてわからないが。
そう思えてならなかった。
でも、蒼子は。
蒼子の言葉だけは、信じられた。
その言葉は本心であると素直に受け入れられた。
「白玖、大丈夫?」
「・・・痛い。痛いよ・・・蒼子」
甘えるように紡がれた弱音に蒼子は何度も頷いた。
こんな風に、弱音を吐く姿を多々良は初めて見たのだ。
驚きに目を見開きながら、小さく微笑んだ。
蒼子はそっと白玖の身体を撫でる。
痛みがなくなるとは思えなかったが、少しでも気分が紛れればいいと。
「白玖、大丈夫だよ。すぐ、よくなるよ」
励ますように何度も何度もそう言った。