妖の王子さま
「その三つの勢力は、数百年誰が妖の世界を統べるのに相応しいのかを競っております。その決着はいつもつかず、互いに深手を負い互いに決着がつかずに引き分けることが続いております」
「数百年も?」
「はい。ですが、そろそろ決着をつけていただきたい。妖の世界を統べるにふさわしいのは我が白玖さま以外におりません。ですから、あなたの力をお貸し頂きたい」
「私の力・・・」
「あなたの、ケガを治癒する能力さえあれば、傷の治らぬ相手に奇襲をかけとどめを刺すこともできましょう。そうすれば、すべての国は白玖さまの手の中に!」
野望をその瞳に宿し、決意を込めた声で言う。
それは、蒼子には拒否権などないと言っているようなものだった。
「そんなの・・・、ムリです。私は、できません」
「いいえ。あなたには、この任を必ずやっていただきます。できないというのなら、あなたにはここで死んでいただきます」
「え!?」
「当然でしょう。この世界の事を知ってしまった人間を生きて帰すわけがないでしょう?」
射抜くような、冷たい視線。
背筋が冷える。
本気で言っていることくらいすぐに分かった。
力を貸すしか道はない。
生か死か、二つに一つ。
しかし、死などそれこそ選ばせてはくれないだろう。