妖の王子さま



「心など、白玖には必要ない!勝手なことを教えるな!貴様、これ以上白玖に余計なことをすれば、ただではおかぬぞ」

「・・・っ、嫌です!私は、白玖に生きててほしいから!白玖に、笑ってほしいから!」

「笑う!?それがなんの意味がある!それで天下はとれるのか!?地位や名誉は我が手に入るのか!?」




母の苛立ちは今にも頂点に達しそうだった。
これ以上は、と多々良は蒼子を止めさせようと立ち上がるが、それよりも母が動くのが早かった。


母は、簾を乱暴に引き払うと右手を掲げ一気に振り下ろした。



母の手から放たれた狐火が蒼子の身体を包んだ。




「ああっ!」




苦しみに声をあげ畳に倒れこむ蒼子。
焼けつくような痛みに顔をしかめ力なく倒れた。



「蒼子さん!」




駆け寄ろうとした多々良にも、母は手を振りかざし狐火を放った。
両手を顔の前でクロスさせ身体を庇った多々良だったが、そのまま吹き飛ばされるように畳に叩きつけられた。






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