妖の王子さま
「人間ごときが、わらわに指図するでない!」
「っ、はぁ・・・はぁ・・・。お願いしますっ!白玖を・・・白玖を解放してあげてくださいっ!」
痛む身体をなんとか起こそうと手に力を込めながら、それでも懇願する。
引くわけにはいかない。
白玖に生きてほしい。
笑っていてほしい。
心を、持ってほしい。
その願いを譲るわけにはいかない。
「黙れ!黙れ!黙れ!」
「ああああっ!!!」
再び狐火を浴びせられた蒼子は、苦しみに唸り声をあげる。
胸で大きく息をしながら横たわる。
「わらわのものを、奪おうとするものは許しはせぬ!」
「白玖は、ものじゃない!・・・傷ついたら痛いし・・・っ悲しか・・・ら涙も・・・でる・・・・モノなんかじゃ・・・ないっ」
意識がもうろうとする中で、蒼子は必死に叫んだ。
わかってはもらえないかもしれない。
それでも。