妖の王子さま
「黙れと言っておろうが!」
怒りに任せ振り上げた右手。
再び狐火を放とうとしていた母は、突然現れた人影に手を止めた。
「・・・白玖っ」
「白玖さま!」
蒼子の身体を引き寄せ、庇うように覆いかぶさると母を見上げる白玖。
蒼子は朦朧とする意識の中、白玖を見上げた。
「母上。蒼子を傷付けることはやめてください。その罰は、代わりに俺が受けるから」
「は、く・・・ダメ・・・」
「蒼子、いいんだ。俺は、いいんだよ。慣れてるから平気なんだ。痛くなんてないし、悲しくなんてないよ。俺には、心なんてないんだから」
白玖の言葉はひどく切なく、悲しいものだった。
「そうね。白玖。こんな人間なんかにうつつを抜かしたお前への罰は、あれだけではまだ足りぬ。お前の望み通り、罰を与えてやろう」
母は、矛先を白玖に向けると右手を掲げ白玖に向かい振り下ろした。