妖の王子さま
「母上・・・っ。蒼子は、俺にいろいろなことを教えてくれました。蒼子は、俺を見てくれました・・・。俺は、蒼子を、・・・蒼子といたい」
「なにを・・・っ母を裏切ると言うのか!」
「戦います。母のために、戦いは辞めません。ですが・・・っ。蒼子を側におくことをお許しください。・・・お願いです」
いつも、怯えてばかりだった白玖が、自分に物申す姿を見て母は言葉を失った。
「ええい!口答えをするお前の顔など見たくない!さっさと出てゆけ!」
苛立たしそうに母はそう言うと、踵を返し元いた場所に戻る。
音を立てながら座ると、側に仕えていた従者にさっさと簾を直せと命令していた。
白玖は、一度頭を下げるとぐったりした蒼子を抱きかかえその部屋を後にした。
多々良も、傷ついた身体を支えながら白玖の後に続いた。
部屋に戻るまで、誰も言葉を発そうとしなかった。