妖の王子さま



「傷つくことに慣れるな、ってどういう意味?」

「白玖さまが、母上にされることに慣れていると言われたからでは?」

「慣れてはいけないの?慣れれば、痛みも感じなくて済むのに」





まるで子どもが、わからないことを尋ねるように。
そして、大人が子どもにわかるよう伝えるように。





「痛みを、感じない。悲しみを、感じない。それは、心がないと言う事です。蒼子さんは、白玖さまに、心を持ってほしいと思っているんですよ」

「心・・・」

「白玖さま。これから、どうされるおつもりですか?今までのように、心を消して、ただ戦うだけの日々に戻りますか?それとも、心を持ったうえで戦う道を選びますか?」

「心を持ったうえで戦う・・・?」




白玖が、多々良を振り向く。
多々良は大きく頷いた。




「それは、とても大変なことです。今までの様にはいかないでしょう。苦しくて、逃げ出したくもなるかもしれません。心を持つということは、痛みを持つという事ですから」

「痛みを、持つ」

「大切なものを持つということは、それを失う恐怖を持つという事です」




白玖が、選ぶ道。




< 229 / 381 >

この作品をシェア

pagetop