妖の王子さま
「傷つくことに慣れるな、ってどういう意味?」
「白玖さまが、母上にされることに慣れていると言われたからでは?」
「慣れてはいけないの?慣れれば、痛みも感じなくて済むのに」
まるで子どもが、わからないことを尋ねるように。
そして、大人が子どもにわかるよう伝えるように。
「痛みを、感じない。悲しみを、感じない。それは、心がないと言う事です。蒼子さんは、白玖さまに、心を持ってほしいと思っているんですよ」
「心・・・」
「白玖さま。これから、どうされるおつもりですか?今までのように、心を消して、ただ戦うだけの日々に戻りますか?それとも、心を持ったうえで戦う道を選びますか?」
「心を持ったうえで戦う・・・?」
白玖が、多々良を振り向く。
多々良は大きく頷いた。
「それは、とても大変なことです。今までの様にはいかないでしょう。苦しくて、逃げ出したくもなるかもしれません。心を持つということは、痛みを持つという事ですから」
「痛みを、持つ」
「大切なものを持つということは、それを失う恐怖を持つという事です」
白玖が、選ぶ道。