妖の王子さま
「死への恐怖、傷つくことへの恐怖。それと、向き合う覚悟はおありですか?」
難しいことを言っていることはわかっていた。
それでも、向き合わなければならない。
今までと、違う戦い方を選ぶのなら。
それなりの覚悟が必要になると、多々良は感じていた。
「わからない。・・・恐怖がどういう物なのか。でも、蒼子には笑っててほしい。蒼子が傷つくのは、見たくないって思う・・・」
「そうですか」
「多々良、俺って・・・おかしいのかな」
「いえ。白玖さまは、知らなかっただけです。これから、知っていきましょう」
知りたいと思うのなら。
全力で力になりましょう。
多々良は、深くそう思った。
「蒼子、早く起きないかな」
「そうですね。早く、目を覚ましてほしいですね」
「うん。蒼子がいないと、眠れないんだ」
まるで抱き枕のような扱いに多々良は苦笑しながら、白玖が知り始めた初めての感情たちを大切にしていきたいと、強く願うのだった。