妖の王子さま
白玖は首をかしげる。
いまいち理解ができなかった。
思い返してみても、朱鬼やいずなとの戦いでいくら相手を傷付けようと自分が痛い思いすることなんてなかった。
痛いと思うのは、自分が傷ついた時くらいだ。
そもそも、その痛みすら感じないようにしてきた。
「多々良にも、いろいろ教えてもらった。でも、難しいんだ。よくわからないんだ」
「うん・・・。でも、いいよ。今はただ・・・白玖が生きていてよかった」
蒼子が笑う。
その笑顔を見て、白玖は体が温かくなったのを感じた。
その感覚に、首をかしげながらも白玖は蒼子の笑顔から目を放せなかった。
「蒼子、今痛い?」
「大丈夫だよ。私の身体、丈夫なの」
「母上、容赦ないお方だから」
「大丈夫」
蒼子は、白玖が心配してくれることが嬉しかった。
以前の白玖なら、他人の事をこんな風に気に掛けることなどなかっただろうからだ。