妖の王子さま



火事場の馬鹿力的な力で蹴り上げられた朱鬼は、蒼子たちの後ろにそびえ立っていた岩山に叩きつけられた。

その時、朱鬼の持っていた金棒が岩山を砕き、砕かれた岩山が蒼子たちの真上に降り注いだ。




「蒼子!!」




慌てて助けに行こうとした白玖だったが、朱鬼の立ち直りの方が早く、金棒を叩きつけられた。

咄嗟に身体を庇ったため深手は追わなかったが強く吹き飛ばされてしまう。



うめき声をあげながら身体を起こした時には、蒼子たちがいたところは岩山で覆われていた。





「・・・あお・・・こ・・・?」





血の気が、サーッと引いていくのがわかった。
身体が震える。

これは、なんだ?



唇が震え、叫び声をあげたいような焦燥感。




初めて感じる心に、白玖は戸惑っていた。




白玖が、初めて感じた・・・・恐怖だった。
蒼子を失ったかもしれない、という恐怖。





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