妖の王子さま
「蒼子・・・、蒼子・・・っ!」
すぐにでも、助けに行きたい想いに駆られ白玖は岩山へ駆け出した。
しかし、それを塞ぐのは、朱鬼だ。
「どけ!」
「貴様は、今誰と戦っているのかを忘れたのか?」
「黙れ。どけ!」
「あんな人間にうつつをぬかし、戦闘を放棄するか」
朱鬼の挑発に白玖は、憎悪のこもった瞳で睨みつけた。
「ならば、貴様を殺していく」
今までに見たことのない、怒りに身を任せた白玖。
その白玖の姿に、鬼と戦っていた多々良も気づいていた。
「白玖さま・・・!?」
今まで、白玖から感じたことのない殺気が放たれている。
殺気が白玖の妖気と相まって禍々しい力が溢れだしていた。
朱鬼は、一瞬恐怖のようなものを覚えた。
今まで一度も、白玖に対して感じたことのなかった恐怖だった。