妖の王子さま
多々良の声に我に返った白玖は、ガクッと膝を折る。
我を忘れ戦い、身体はすでにボロボロになっていた。
「白玖さま」
「蒼子・・・蒼子・・・」
うわごとのように蒼子の名を呼ぶ白玖に、多々良は唇を噛みしめる。
恐れていたことが起きたのだと。
恐怖。
感じることなく過ぎればいいと思っていた。
まさか、こんなに早く直面することになるなんて。
多々良は、蒼子を連れてきたことを後悔していた。
「待っていてください。白玖さま、今・・・」
まだ、絶望と決めつけるのは早いと。
多々良は、岩山が崩れた場所に走ると、崩れた岩をどかしていく。
その姿を見て、白玖も立ち上がり一緒になって岩をどかしていく。
そして、そんな姿を見た他の狐たちも一緒になってどかし始めた。
しばらくどかし続けていると、その下に空洞ができていることに気づく。
そして、そこに人の姿を発見した。