妖の王子さま
白玖は、湯船につかり考えていた。
傷だらけの自分の腕を湯から上げまじまじと見つめながら。
はじめ、朱鬼が標的を蒼子に向けた時。
自分の身体が、自分のモノでないかのような力が発揮され、朱鬼に追いつくことができその体を蹴り上げることができた。
一瞬の出来事だった。
そして、蒼子がん死んだかもしれない。
そう思った瞬間、血が一気に心臓に吸い寄せられるように体中から血の気が引いた気がした。
そして次の瞬間、一気に体中が熱くなり、なにも考えられなくなった。
「あれは・・・なんだったのだ・・・」
無性に、朱鬼を殺したいと思った。
強く、強く、体中の血が沸騰するかのような感情が溢れ。
自分では、制御できなくなった。
それから、多々良に声をかけられるまでの記憶がない。
ただ、熱くて。
ただ、むかむかと胸が苦しかった。
それだけだった。