妖の王子さま
「蒼子さん。あなたの力で白玖さまを助けるのです」
向けられた視線から逃れたかった。
拒否権など傍からないのだと、つくづくわかってはいながら。
どうにか逃げる道を必死に考える。
「蒼子さん」
くぎを刺すように言われ、諦めたように蒼子は前に進む。
そして、小さく深呼吸をして布団に横たわる“白玖さま”を見た。
銀色の髪。
その頭には同じく銀色の獣耳。
そして布団から見える、数本の銀色の尻尾。
ぐったりと眉間にしわを寄せ横たわるその姿は痛々しく。
そっと布団を捲ると、金色の単に濃紅色の狩袴、真っ白な狩衣を身に纏っている。
しかしその着物も、ところどころ切り裂かれ赤く染まっている。
「ひどい・・・」
この状態で、生きているんだろうか。
まじまじと見つめる。
長い睫がすっと伸び、すっと通った鼻筋。
目を閉じていても、綺麗な顔立ちをしているのがわかる。