妖の王子さま



そして、蒼子が生きていたとわかった時の、上がっていた心臓が、すとんと元の位置に戻ったような、自分の中が空っぽになったような感覚。



それが、ホッとしたのだと安心したのだということを白玖は知らなかった。




そして、溢れだした涙。





「蒼子・・・」




名を呼べば、身体がポカポカと温かくなるような気がした。




「蒼子」




そう気づいてから、何度も何度も蒼子を呼ぶ。
呼んでいるうちに、蒼子そのものを求めていることに気づいた白玖は湯から上がり急いで着物を着てバタバタと音を立てながら廊下を歩いた。



一刻も早く蒼子に会いたい。




白玖の中では、会いたい、という気持ちは知らないため、顔が見たいその一心だった。





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