妖の王子さま
「ん?おかしい。あいつを見ても、むかむかしない。おれは、あいつが嫌いなんじゃないの?」
首をかしげながら白玖が呟いた。
好き、嫌い、の定義は理解しているらしいが、ものすごくざっくばらんな振り分け方に牛鬼は呆れながらも、倒れたままだった身体を起こした。
「なんだよ!白玖、教えてあげるよ。それは、嫉妬っていうんだぜ!」
「嫉妬?」
白玖は興味深そうに言った。
反対に、蒼子は顔を赤らめる。
まさか、嫉妬されていたなんて、蒼子自身も思っていなかったからだ。
「え、ちょ、ちょっと待って!嫉妬って!」
「俺が蒼子さまの包帯を巻いている姿を見てむかむかしたんだろ?そんなの、嫉妬以外のなんでもねぇよ」
まったく、とあきれた様子で部屋に戻ってきた牛鬼は胡坐をかいて座る。
まるで、主従関係が逆転したようだった。
やれやれ、と多々良は膳を中まで運ぶと少し端にとりあえずおいておく。
「おい、嫉妬ってなに?」
「嫉妬っていうのはな、好きな女の子が他の男と仲良くしているのを見て、胸がむかむかしたりイライラとして、女の子を一人占めしたいって思う事だ」
「・・・おれは、嫉妬をしたの?」
顎に手を当て、考え込む白玖に、蒼子はなにも言えなかった。
どうせなら、自分のいないところでしてほしいと強く思った。