妖の王子さま
「まぁ、用は、白玖は蒼子さまが好きってことだな」
牛鬼は勝ち誇ったような顔でそう言い放った。
蒼子はさらに顔を赤らめる。
「好き・・・。そうか」
頷いた白玖だったが、その好きという感情にもいろいろあるということを白玖は知らなかった。
蒼子のことは嫌いではないのだから好きなのだろうと納得した程度だった。
「・・・あれ、わかってんのかな?」
「半々といったところでしょうかね?」
こそっと牛鬼が多々良に尋ねるが、多々良も首をかしげる。
牛鬼が言っていた好きという感情は、恋愛感情として、だったのだが、白玖にはきっと伝わっていないだろうとも思っていた。
「白玖さまが、これから気づいていかれたらいいですよ」
気長に待ちましょう、そう告げて多々良はようやく膳を二人の前に差し出した。
「すみません、少し冷めてしまったかもしれませんが」
「わあ!美味しそう。ありがとう、多々良」
話を切り替えるように蒼子が明るく言った。