妖の王子さま
「いただきます」
箸を手に持ち、食事を始める蒼子。
美味しそうに食べる蒼子を見つめ、白玖も箸に手を付けた。
ぱくっと一口に物を口に運ぶ。
多々良はそれを見て、微笑んだ。
「美味しい!ね、白玖、美味しいね」
「・・・ああ」
心が満たされるような感覚。
ああ、これがおいしいと言う事か。
白玖は噛みしめるようにもう一口口に運ぶ。
「味がする」
白玖は、そう呟いた。
今までも、味は確かについていた。
それでも、興味を示さなかった白玖には、味を感じる事すら興味がなかった。
「これも。これも。味がする」
「ふふっ。気に入った?」
「うん。これが、美味しいってこと?」
「そうだよ」
目を輝かせて次々と口に運ぶ白玖を、嬉しそうに眺め蒼子も同じように箸を進めた。
白玖に芽生えた感情。
誰もがそれに、喜びを感じていた。