妖の王子さま
迫りくる天を見つめていた白玖は、勢いよく身体を起こし、天をその上から落とした。
「きゃあっ!?」
突然の事に驚いた天は、声をあげ白玖を見上げた。
「・・・つまらん。帰っていいよ」
白玖はそう告げると着物を整え、襖をあけ部屋の外に出た。
すぐ外に見える庭では、蒼子が志多良と花を見ながら話しているのが見えた。
その姿を見ると、さっきまでの冷めていた心に熱を帯びるような気がした。
心がポカポカと温かく、満たされるような感覚。
「蒼子!」
思わず声をかけると、その声に反応した蒼子が立ち上がり振り返った。
部屋に天が入っていくのを見てしまっていた蒼子は、少し戸惑いながら振り向くと廊下で立つ白玖の姿をとらえた。
側に天の姿がないことに少しホッとして蒼子は白玖に手を振った。