妖の王子さま
子ぎつねはどんどん進んでいく。
蒼子は引かれるまま、足をもつれさせながらついていった。
「あ、あの。どこまで行くの?落し物って」
「もっとずっと先の方なの」
子ぎつねは、そう言うとさらに歩く速度を速め先へ先へと進んでいく。
蒼子は、連れられながらなんとなく見覚えのある道だと感じた。
何度か通ったことのある道。
人間界に行く道・・・?
首をかしげると同時に、見知った景色が広がった。
「え、ここ・・・」
そこは、人間界のあの丘。
蒼子が呟くと、手を引いていた子狐がボンと煙を立て消えた。
そして、煙が引いて現れたのは、あの女狐、天だった。
「え・・・?」
状況が理解できず、戸惑う蒼子。