妖の王子さま



「お前がいなければ、白玖さまがあんな風にはならなかった!全部、お前のせいだ!」

「え?どういう事・・・?」

「お前は目障りだ!人間界に帰れ!」




天は罵倒し叫ぶ。
怒りに任せ、蒼子を罵った。




「お前がいなければ、白玖さまは私を必要としてくれるんだ!お前さえいなければ!」




そう言うと天は、来た道を帰っていく。
慌てて追おうと思った蒼子だったが、すぐに妖の世界への道は消えてしまった。

蒼子だけではその道を開くことはできない。
蒼子は途方に暮れるしかなかった。




「白玖・・・」



儚く呼んだ白玖の名は、届くことなく空気へと消えた。
しかし、その場にいつまでもいることもできず、仕方なく蒼子は自分の家へと帰った。


大家に頼み鍵を開けてもらうと自分の一人暮らしの部屋に帰った。
ずいぶん久しぶりに思える自宅は、酷く寂しかった。




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