妖の王子さま
白玖という妖
「自分で制御できないのですね」
倒れた蒼子を受け止めた多々良はそう呟く。
死なれては面倒だ。
これから先も、この娘には力になってもらわなければならないのだから。
「志多良、蒼子さんの手当てをお願いします」
「えっ、オイラ?・・・わかったよ」
蒼子の力を目の当たりにし、戸惑った様子の志多良だったが、多々良にそう言われハッとする。
多々良がそっと蒼子の身体を抱き上げ歩き出す。
志多良はそのあとを慌てて追った。
「白玖さまの着物の替えを用意しておいてください」
外で待っていた狐の遣いにそう告げると真っ直ぐ先ほどの牢へと足を進めた。
この者の存在を、白玖さまに気づかれてはいけない。
多々良はその思いで蒼子を再びあの牢へと連れて行った。
「では頼みましたよ」
「任せろ!」
多々良の言葉に笑顔で答え、持ってきた手当の道具を広げる。
それをチラリと見た後、多々良はその場を後にした。