妖の王子さま
「・・・あれ・・・」
蒼子が目を覚ましたのは、それから2時間ほど後のことだった。
「あんた、目が覚めたんだな!」
ぬっと現れた志多良の顔に目を丸くさせ息をのんだ。
夢ではなかった。
そのことが胸をチクリと痛ませた。
「私・・・」
「あんた、凄いんだな!あっという間に白玖さまのケガを治しちまうんだから!」
「あ・・・」
そうか、と思う。
そっと自分の掌を見つめた。
ゾクリと背筋が冷える。
死ぬところだった。
今まであんなに酷いケガを移したことなんてなかった。
加減もわからず、引き受けるままに引き受けてしまった体。
「手当はしたから安心しろ!」
「ありがとう・・・」
無邪気な笑顔に、責める気にもなれない。
泣き出したい気持ちを抑え蒼子はお礼を言った。