妖の王子さま
「うーん。戻らないほうがいいと思う」
「そうそう。さっさと戻ろうぜ」
そう言ってさっさと切り上げようとする。
昨夜のあの惨状を思い出し、肩を竦めたのだ。
蒼子は首をかしげながらも、反対する理由もなく二人についていった。
「ねぇ、名前は?」
「名前?さー。名前なんて特にないんじゃない?必要なかっただろうし」
「じゃあ、私が付けてもいいかな?」
「お、いいね。つけてあげなよ」
かまいたちは嬉しそうにピクッと身体を起こし蒼子を振り向いた。
「じゃあ、・・・くーちゃんと、きーくんね」
「くーちゃんときーくん?可愛い名前だな」
「白玖の肩に乗ってるのが、くーちゃん。牛鬼の肩に乗ってるのが、きーくん」
「それって、俺らの名前の語尾とった?」
「え、ばれた?」
「蒼子さま、ちょー安易」
「え、いいじゃない!可愛いよ」
それでもかまいたちたちは嬉しそうに身体を揺らす。
屋敷に戻った蒼子は、名前を間違えないように小さく切った布をそれぞれの首に巻いた。
黄色の布をくーちゃん、オレンジの布をきーくんに巻きつけると満足そうに笑った。