妖の王子さま
「お祭り?」
蒼子は、目を輝かせて牛鬼を見た。
ある日の事、牛鬼がお祭りに白玖と行ってきたら?と言い出したのだ。
「お祭りって、出店とかが出てる・・・お祭り?」
「そう。年に一度妖の世で開かれるお祭り。その日だけは無礼講で、3つの国の妖たちがそのお祭りに参加するんだ」
「そうなんだ・・・」
戦は一時休戦となって、妖の世全体で催すお祭りなのだと牛鬼は言った。
たくさんの妖が集まるそのお祭りに、白玖と一緒に参加してきたらいいと続けた。
蒼子は、行きたい衝動に駆られるが、果たして白玖が行ってくれるかどうか・・・。
「蒼子の頼みなら、きっと白玖は大丈夫だ」
牛鬼は、蒼子のその心配をわかっていたようで、そう言って笑った。
そうだろうか、と蒼子は考える。
もしそうなら、行ってみたいと思うのだった。
「楽しそうだね、お祭りなんて」
「年に一度の大切な日だからね。その日のためにたくさんの催しを用意しているんだ」
「そうなんだ」
「きっと、多々良たちも何か催しに参加しているはずだよ」
「多々良たちが?」
「そう。その国の長に仕える部下たちも、競うようにして催しを考えるんだ」