妖の王子さま
しかし、生地もなにもかも、上質なもので仕上げ蒼子のために誂えたその着物。
蒼子を飾りたてるのに、十分な役割を果たしていた。
「お待たせ」
「・・・うん」
蒼子の姿に見惚れたまま、なにも言えない白玖に、蒼子は笑いかけ隣に並ぶ。
動き出さない白玖に、蒼子は首を傾げ白玖を見上げた。
「・・・白玖?」
呼ばれ、戸惑うように視線を反らす。
なんなのだろう、この気持ちは。
白玖は、戸惑いに揺れた。
「蒼子、綺麗だ」
「え・・・っ、あ、着物、素敵だよね。帯も、すごく可愛くしてもらっちゃったの」
蒼子は、着物を褒められたものだと思い、背中の帯を見せるようにくるっと回った。
白玖は、そんな蒼子を後ろからふわっと抱きしめた。
「わっ!?は、白玖?」
戸惑いの声を上げ、蒼子は身体を固くさせた。