妖の王子さま
雲はどんどん厚さを増している気がする。
これは、来る。
蒼子はさらに沈んでくる気持ちを何とか持ちこたえ、家路を急いだ。
本当ならこのままいつもの丘に行くつもりだったのに。
その時。
目の前を小さな物体が横切った。
なに・・・?
首を傾げる間もなくそれは消え去り、残されたのは地に残された赤い斑点。
「蒼子?立ち止まってどうしたの?」
気づかず少し先まで歩いて行ってしまっていたゆかりは蒼子を振り返り声を上げる。
何度か前方を気にしながら、蒼子の方へと戻ってこようと足を踏み出す。
「あ、ごめん。先に帰って。私、用思い出したから」
それを、蒼子は制した。