妖の王子さま
「オイラたちも、人間より傷の治りは早いんだ」
「そう・・・」
志多良の話に返事をすることさえ億劫になってきていた。
もういっそこのまま死んでしまえたら・・・。
そんな事さえ頭を過ぎる。
「そうだ・・・、あの人は?あの怪我をしていた」
「白玖さま?」
「そう・・・。あなたたちの主とかいう。生きてる?」
それだけは気になった。
こんな思いまでしたのに、あのまま死んでしまっていたら。
今のこの苦しみさえむだになってしまう。
「目を覚まして今はもう任につかれているよ」
「・・・そう」
その言葉に少しばかりホッとする。
ならば、多少この苦しみにも意味があったという事。
虚しいけれど、悲しいけれど。
「白玖さまは、本当にすごいお方なんだ」
「・・・」
目を輝かせて志多良が言う。