妖の王子さま
「・・・見せたくない。誰にも、蒼子の事、見せたくない」
蒼子を抱きしめ、そう呟く。
自分だけ見ていたい、白玖はそう思った。
もちろん、そんな感情すら初めてで。
隠すことを知らない白玖は、蒼子にまっすぐその思いをぶつけた。
「白玖・・・」
「おれだけのモノにしたい」
耳元で聞こえる余裕のない声。
蒼子は身体を火照らせ、恥ずかしさに顔をうずめた。
「・・・はく」
「ン・・・。ごめん。なんか、変だね」
蒼子の声に、白玖はようやく身体を離した。
困ったように笑うと蒼子に手を差し出した。
「手、繋いでいこっか」
まっすぐ向けられた思いに、蒼子は息を詰まらせ顔を赤く染めたまま頷くとその手を取った。
大きな大きな白玖の手。
強く、蒼子の手を包み込んだ。